美しい湖畔のそばにある孤児養護施設の保母栄子は、母きくが死ぬ時に残した日記帳を見て意外な事実を知った。日記帳には栄子の父が、現在の作曲界の重鎮河田武彦であることが記されていた。はやる心を押さえて上京した栄子は河田を訪ね、きくの死を告げたが、河田は愛人きくの面影を栄子に認めながらも、家庭の事情から娘と呼べず、栄子を追い帰さねばならなかった。河田の妻恒子は、隠居の身分ながら作曲界の大御所として存在する恩師田島の娘だった。また河田の娘八千代は、恒子が愛人との間にこしらえた娘だったのだ。栄子はふとしたことから新進作曲家関と知りあい彼のアパートの一室を借りることになった。関は栄子に歌の才能があることを認め、それを知った河田が内密に学費を出してくれたことから、栄子を音楽教室に通わせることにした。やがて歌手志望だった八千代と共に、同じ頃に歌謡界にデビューした栄子は、皮肉にも八千代と新人賞を争うことになった。審査員の意見が分れ、河田の意見で新人賞の行方が決定するというとき、河田は八千代を推した。それを私情だと怒る関に、河田は栄子が実の娘であり、八千代の出生の秘密を打ち明けるのだった。そんなある日、河田夫妻の結婚記念と、八千代の新人賞受賞のパーティが盛大に開かれたのをよそに、栄子は淋しく故郷に帰って行った。一方、その後を追った関は、栄子が母から聞かされたメロディを口ずさむのを聞き、それをヒントに曲にまとめた。関の新曲の譜を見た河田は、原曲がきくとの思い出を秘めた「純情二重奏」であるのを知り、それを八千代に歌わせた。栄子に歌わせて芸術祭賞を狙おうとしていた関は怒り、八千代に彼女の出生の秘密を知らせた。間もなく、その曲で芸術祭賞を受けた八千代は記念リサイタルを開いたが、舞台の上から、自分をそっと見守っている栄子を見た八千代は、観客に自分と栄子が姉妹だと打ち明けると、栄子と二人で「新純情二重奏」を歌うのだった。
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