大正の頃。宇和島に住む漁師の伯父に育てられていた孤児の近藤ミネは、地元の名家大浜家の長男・実と恋に落ちる。二人は出奔するが、九州に向かう列車の中で代議士暗殺事件に遭遇し、暗殺者の一味と間違えられて警察に逮捕される。出獄したミネは、獄中で出会った思想犯の小川つると共にカフェの女給をしながら実と愛の巣を構えるが、実は家族に連れ戻されてしまう。 実を追って宇和島まで戻ってきたミネは、家族に反対されて愛を貫くことの出来ない実の不甲斐なさに絶望し、海に身を投げようとしたところを、たまたま里帰りをしていた長田という男に助けられ、それが縁で長田の妻になる。 長田は、神戸港で荷役の人夫たちを仕切る大親分だが、新興のヤクザである岸本組は長田を快く思わず、客人の侠客・田中清次郎を刺客に仕立てて、長田の命を狙おうとする。暗殺は失敗するが、清次郎は長田の妻となったミネの顔を見て愕然とする。かつての代議士暗殺事件の犯人は清次郎であり、彼は列車の中でミネとすれ違って以来、彼女に密かな恋心を抱いていたのだった。この一件以来、清次郎は長田一家を岸本組の妨害工作から守るようになり、そして、ある夏の晩、ミネと清次郎はとうとう一夜を共にすることになるのだった。
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