頃は大正、浅草六区の活動写真館の弁士、黒木大次郎を首領株に「ダムダム団」というアナーキストの集団があった。弁士見習いの平田玄二が副団長格で、井上他十数名の団員がいた。成金代議士・谷川武彦の息子で大学生の国彦もいつしか彼らの仲間になっていた。ある日、温泉場行の乗合馬車で国彦は令嬢風の娘しのに会い、撞球場で虚無的な男、北天才と知り合った。北は国彦を料理屋に誘い痛飲した挙句、翌朝姿を消した。のんびり床を起き出して散歩していた国彦は、しのと会った。二人は散歩の道すがら大木で首を吊っている北を発見した。その夜、北の通夜に参列した国彦はしのと顔を合わせた。彼女には昼間同様、影の如く山口という男がついていた。翌日、しのが東京へ帰ったのを知った国彦は、後を追うように東京へ帰り、玄二を訪ねた。国彦は浅草六区を縄張りにしている女スリのお新に紹介された。その夜三人は夜遅くまで痛飲した。交番襲撃に失敗したダムダム団は、今度は政界の黒幕北条寺の孫娘を誘拐した。その娘を見た国彦は驚いた。しのだったのだ。ところが彼女は誘拐とはつゆ知らず、国彦が自分を口説くために友人を使ったと思っていた。その夜、ようやく二人は愛を確めあうのだった。それを知った仲間は驚いたが、それでも身代金奪取の計画はやめなかった。数日後、山口ら屈強の男たちを護衛にして身代金を持った北条寺がしのを引き取りに来た。乱闘となり、そのどさくさにまぎれて玄二と国彦は身代金を奪い、しのを連れて脱出した。しかしトランクの中は少々の札と新聞紙の束。右翼と左翼の両方から追われる立場になった玄二と国彦、祖父をふりきって来たしの。追われる三人は、丁度、玄二の友人が監督する活動写真のロケ隊に会った。そこで三人は撮影に使っていた気球に便乗した。しかし林の中へ着陸した三人に、黒木たちが追いついた。凄惨な内ゲバが始った。玄二の剣は冴えた。国彦の腕の中でしのは腰を抜かした。東北の貧村の玄二の故郷をめざして三人の旅は続いた。宮様が来るという城下町で、三人は銀行を襲い現金を強奪して、玄二の実家へ辿り着いたものの弟の嫁に銀行強盗を見破られ、飛び出した。日本がダメなら満州があるさ。三人は港町へ行った。そのころ東京で黒木が政府の要人を襲い殺された。玄二は泣いた。そんな玄二が哀れで、しのは玄二に身をあずけた。翌朝、玄二は黒木の意志を継ぐべく、東京へ戻りテロを敢行、射殺された。国彦は一人で満州行きの船に乗りこんだ。だがその船にいたのは山口だった。山口の拳銃がうなり、国彦は死んだ。無人の浜に一人でたわむれるしの。真赤な太陽が沈み、浜は一面に月見草が……。
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